病院へ留学だ

妙齢の女子たちよ、自分の身体に目を向けるのを忘れてはいけない。そして毎日を機嫌よく生きよう。

かかりつけ医と大病院-病院紹介の経緯

現在の日本では、具合が悪くなったらまず地域の開業医に行き、そこで診察を受けてから、問題がある、またはありそうな場合は、精密検査のできる大病院に紹介状を書いてもらうことを推進している。いきなり大学病院や都立病院に行かず、かかりつけ医をつくっておくことの重要性を説いている。

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これは私も概ね合理性があると思う。大病院は専門の診療科が揃っているため、いきなり行く場合はまず自身でそれを決めねばならない。

もし、私のように「胃の辺りが詰まった感じ。食べると腹がコポコポする」という症状を感じたなら、素人は単純に消化器の不調を想起する。しかしその原因が自分の脳内にない病だった場合(今回のケースは悪性リンパ腫)、診療科を誤る可能性大だ。

また、選択が誤っていた場合、まずは自分があたりをつけた方向性で検査が進む可能性が大きく、不調の原因が長く見つからない可能性もある(そういう話は何度か聞いたことがある)。いずれにせよ、遠回りをしてお金と時間を無駄にする。「大病院なのに」という焦りも出るかもしれない。

 

かかりつけ医があると、そんなに頻繁に行かなかったとしても、そこにデータが幾許かは集約される。すると、診断のための手がかりが見つかりやすくなることもある。

今回の悪性リンパ腫発覚の経緯でもそうだ。私はちょっとした風邪や胃腸の不調はここ、と決めている病院があるのだが、前のページでも書いた通り、2020年9月、消化器の不調のためかかりつけ医を訪れていた。

その時は血液検査の結果、「軽い脂肪肝の可能性がある」ということくらいで、消化器の問題は指摘されなかったのだが、4か月後の2021年1月、改めて消化器の不調を感じて訪れたとき「前も同じ症状を訴えていたね」と先生は開口一番に言ったのだった。

しかし当の本人は、4か月前の通院で何を訴えたかなど、症状が消えてしまえばキレイに忘れてしまっていたりする。しかしカルテには残っているのだ。

ちなみに、9月の血液検査の結果を「悪性リンパ腫」と強く疑って読んだ場合は、今みると可能性がなくもないな…とは思える。しかし健康な人とあまり変わらないデータとでもあり、痛みは出ていなかったので、緊急を要するほどではなかったともいえる。特に私のかかっている悪性リンパ腫は、濾胞性リンパ腫(FL)という、年単位で進行していくものだったこともあり、この4か月は腫瘍に圧迫された内臓がなんとか持ちこたえてしまったのだろう。

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結果、4か月でかなり腫瘍が大きくなってしまったという事実はあり、入院直前はエイリアンでも産まれるかと思うほど腹が張って、夜は眠れないほどになった。

しかしそこはかかりつけ医を責めてもしかたない部分もあると思っている。仮に9月に判明しても、1月に判明しても、行う治療法は変わらない。今こうして生きているし、過ぎたことはしょうがない。むしろ1月の判断がスピーディーで、その後大病院紹介までの段取りを、その場でなんとかしてくれたことには感謝している。

 

さて、その大病院紹介なのだが、ここは如実にコロナの影響を受けた。

なぜなら、我が家の最寄りの大病院は駒込病院。同院はがんと感染症に特化した都立病院であり、治療実績も多い。しかし後者の理由からコロナ患者により医療体制がひっ迫。折りしも近隣の医療機関に受け入れ停止の申し出をしていたタイミングと重なってしまった。

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次にあたったのは比較的近隣の大学病院だ。まず当たったN病院は受け入れNG。最終的に、国立の大学病院で受け入れが決まった。ここはもともと診察券を持っていたのも決め手になったかもしれない。しかしほっとするのは早かった。

病院が決まったからといって、すぐに治療が始まるわけではない。血液がんは膨大な種類があり、具体的に病名が定まるまでに、少なくとも二週間かかるのだ。次回はその話をしたい。

 

画像診断の衝撃 ー MRIで知る、腫瘍の位置と立体感

<本日のテーマ>
エコーとMRIでわかること

年に一度の法定健康診断(会社や区でやる健康診断)は10月に受けていた。

そのとき大腸がんや肺がんなどの指標のひとつになる代表的な腫瘍マーカーCEAも血液検査の項目に含めた。しかし悪性リンパ腫という血液がんは、それでは見つからない。10月の時点では、健康だと思っていた。

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ではどうして見つかったのか。すべては画像検査だ。1月半ば、腹の上が詰まったような感覚と、食べ始めてまもなく胃のあたりがポコポコいう症状を訴え、私はかかりつけ医を訪ねた。

驚いたことに、開口一番先生は言った。「9月に来たときと同じことを言ってるね」。 

言われて初めて、私は9月にもなんだか消化器が弱っていて、背中が痛い感じがあり、かかりつけ医に来ていたことを思いだした。喉元過ぎれば熱さを忘れる。ちなみに先生は内科のなかでも消化器、肝臓が専門である。

そこで先生は、9月に疑わなかった何かを感じたのであろう。腹部触診をして「左下腹部が硬いね、上の方も硬いかもしれない」と言い、「すぐにエコーをやりましょう」という話になった。

リアルタイムで画像が見えるエコー検査

エコー検査は、身体の外から体内を見ていく超音波検査だ。見たい場所の皮膚の表面にジェルを塗り、プローブと呼ばれる聴診器のようなものをコロコロ回して、中の状態を白黒画面に映し出す。

すると、丸くて白いものが画面上に現れた。まずは下腹部に6cmくらいの腫瘍。これは以前からある子宮筋腫だ。そしてもうひとつ、10cmくらいの腫瘍が見えた。

そこからの対応は早い。

近隣の放射線診断専門病院に連絡を入れ、MRI検査のアポイントを取り、午後には即検査。これは地の利があった。この放射線クリニックは、私にとって国民健康保険時代に区の検診で毎年利用していた馴染みの病院だったからだ。

エコー検査とMRI検査の違いとは?

エコー検査は、妊婦さんのお腹の中にいる胎児を見るときにも使われる通り、リアルタイムで腫瘍の存在や心臓などの動きがわかる。しかし、画像はぼやっとしていて、素人の目視でそこから得られる情報は限定的でもある。

一方MRIは、強い磁場と電波の組み合わせで体の断層画像を撮影するもので、縦軸と横軸の両方が一度に撮影できる。また、骨や空気による画像への影響がなく、患者目線だと、以下のような印象を受ける。

①造影剤を使わないので気が楽
②(それほど気にしてはいないが)X線による被ばくがない
③時間が長め(20~60分)

MRI脳ドックでよく用いられるが、消化器系だと肝臓、胆嚢、脾臓の腫瘍性病変の撮影などにも使われるようだ。

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撮影はドーム型の機器で行われる。開始されるとガー!ピー!となかなか強烈な音を発するのだが、さすが専門病院。撮影前にクラシック音楽が流れるイヤホンを渡され、まあまあリラックスした気持ちで横たわることができた。

時間は30分くらいだろうか。しかし体感的にはそれより長い印象を受けた。そして実際、長かった。なぜなら放射線技師たちは、かかりつけ医に指定された撮影部位よりも広範囲の撮影をしてくれていたからだ。

「実は撮影指定部位が骨盤MRIだったのですが、腹部のほうに何かあるように見えて、技師が腹部まで撮影したんです。腹部に、20cmくらいの腫瘍があります。これがなにかは今はわかりません。主治医にこの画像を渡して、精密検査をしてもらってくださいね」

でてきた画像を見て、思わず目を疑った。

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腹部MRIの結果。謎にでかいものがそこにあった。

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腹部MRIその2。左下腹部が少し出っ張っていたのは、子宮筋腫ではなくこれだった。

身体の側面を映した画像には、腹の部分に塗り潰されたようなエリアがある。断面を見ると、腹部全体を異様に大きなものが占拠していた。しかし、これがなんだかわからない。何かが肥大したのか、それとも新たにできているのか。

時は週末の土曜日。次回は、週明け早々かかりつけ医を訪れ、大病院を紹介されるまでの話を書きたい。そこにはコロナの影響があった。

 

その腹は、食べ過ぎではない ー なぜ私に悪性リンパ腫が見つかったか

<本日のテーマ>
腹が張っているからといって、胃腸や婦人科の不具合とは限らない。

毎年健康診断を受けている人でも、身体に隠れている病には、意外と気づかないものだ。

法廷健康診断では顕在化されない病は山ほどあるし、どこ痛いとかダルいとか、自覚症状がないと、日々の暮らしは通常モードで続行してしまう。

これまで健康優良児だった人なら、体内の異変にはさらに気づきにくいかもしれない。自分が健康だと信じていると、ちょっとくらい無理できると思ってしまうし、少し調子が悪いとなると、消化器系か身体の凝りかと思ってしまう。

身に覚えはないだろうか。腹に膨満感や消化不良感があれば、消化薬を飲めばなんとかなると思い込み、背中や肩が痛いようであれば、指圧やストレッチで乗り切ろうとする。

しかしそれらがとんと効かないとなると、話は変わってくる。私がそうだった。

肉体的強者から弱者へ

まずは闘病記の前に、私自身について軽く紹介しておきたい。現在の年齢は40代半ば。新卒で企業に勤めたのち、20代の終わり頃、コンテンツ制作の自営業を始めて10数年になる。内訳はフリーランスで数年、法人にして10年くらい。

コンテンツ制作とは何かというと、記事や広告を作ったり、リアルではイベントやツアーを企画して運営したり。主な仕事は執筆だが、日々、誰かがなにかを楽しむ‟もと”を作りたいと思っていろいろやってきたつもりだ。

コロナ前までは出張が多く、国内外あちこちにに出かけていた。持病はスギ花粉症くらいで、旅行も食べることも大好き。そんな私に悪性リンパ腫という血液のがんが見つかったのが、コロナで移動がパタッとなくなり、肉体的にラクだった2020年を経た、翌年の1月だというのがなんともいえないところである。

この病気で、私は無菌室に入院し、肉体的強者から、一気に弱者の視点を得た。

脳内辞書に「腫瘍」はなかった

気づいたきっかけは些細なことだ。「なんとなく、いつもよりあまり量が食べられなくなっているなぁ」。最初はそんな感覚だった。

どのくらいかというと、「出された料理を全部食べても苦しくない。さらに1~2品は食べられるぞ!」というのが基本だとしたら、全部食べるとちょっと胸につかえるという感じ。少し食べると、腹の上の方がコポコポいう。

「なんだろう。消化力が弱っているのかな」。そう思って食事の前後に大正漢方胃腸薬とか、太田胃散を飲むようにしたが、まったく効かない。

決定的におかしいと思ったのが2021年1月半ば、昼に中華のコース料理を食べたときのこと。昼からそんな量があったわけでもないのに、翌日の晩まで、まったく食欲がわかなかった。これは私にとってはあり得ないことだ。

MRIの画像を見た今ならその理由がわかる。胴体の中に大きく成長したリンパ腫が、内臓を圧迫していたのだ。しかし痛くもかゆくもないから、そんなものが腹で増殖しているとは気づきもしなかった。

人は知っている症状に不具合をあてはめがちだ。医師に‟巨大腫瘍”と書かれるほどの腫瘍があっても、脳内辞書に‟腫瘍”という言葉が書かれていないと、思いつきすらしない。

たしかに腹は膨れていた。しかしじわじわと膨らむと、残念ながらこれもあまり気にならない。夫には「食べ過ぎなんだよ」と言われて、それもそうかなと思ってしまっていた。

では私はどうして腫瘍を見つけたのか。次回は発見のプロセス(触診→エコー検査→MRI検査)についてお話ししたい。